独立して経営者になるということ

起業したいと願うのは,特にIT業界の若手エンジニアにとってはもはや普通の話.私の知り合いの多くが起業を目指して退職したり,転職したりと,40歳は人生の折り返し地点だと言って行動を起こした.もうそういう年齢なんだろうなと改めて我が身を振り返る.

だけど中には,あまりにも軽率でもう少し考えてから行動した方がいいんじゃないか?と素人の私から見てもそう思ってしまうケースがあった.結局,彼は1年と経たずして挫折し再就職したが.

スピリチュアルな経営などありえない

彼が傾倒していたのが斎藤一人の自己啓発本.斎藤一人は企業経営者で最も成功したと言われる人で,何年もの間,高額納税者ランキングのトップにいたとか.ワタシも斎藤一人の本を読んでみたけど,経営者として最低限の心構えと言うか,兎角マイナス思考に陥りがちな日本人に対して,プラス思考のスピリットを教え込もうとしてる内容に思えた.それはよく分かった.

だけど,ちょっと問題だなと思ったのは,プラス思考の言葉を念仏のように唱えていれば何事もうまくいくようなことを言っており,その辺の考え方に全く論理性がなくスピリチュアルな匂いすらあることだ.このようなことを企業経営のセオリーと勘違いし,経営上の問題点や課題点を直視しないのでは全くナンセンスである.宗教団体ですら,恐ろしく現実的な経営戦略で莫大な収入を得ている.スピリチュアルな経営などそもそもありえない

私の知り合いは斎藤一人にかなり傾倒していた.だけど,残念だが「南無阿弥陀仏」を100回唱えると極楽浄土に行けるかもしれないが,「自分は幸せだ」を100回唱えても,娑婆の世界で生きて行く手段にはなりえない.

もちろん,すべてを否定するわけではない.肯定的な言葉を何度も何度も口にすることでNLPで言うところのアンカリングがかかるので,脳を(いい意味で)騙してマイナス感情を消し去ることは,ある程度は可能だと思うし意義もある.だけど,それだけで奇跡が起きて,すべてうまく行くなどというのはムシが良すぎる.経営者でない私でも,その程度の道理は理解できる.

経営は経験半分,セオリーが半分

私の父もある意味,斎藤一人と似てるところがあった.父も自営業だったが,根っからの技術者で学問嫌い.多くの挫折を経験し,体で経営というものを学んできた人.だけど,たとえ勉強嫌いでも経営の基本的なことを最低限学んでいれば,しないで済んだ苦労もあったのではないかと思う.斎藤一人は父と同じで学問を否定している.

起業経営は100%経験と思われがちだが,経験が半分,セオリーが半分だろう(だからMBAが存在する!).さらに経験の多くは先人から聞くことができる.もちろん,聞くだけじゃ本当の意味での経験にはならないけど,再起不能なくらいの大失敗は経験した後では遅い.そのことを事前に勉強して知ってるかどうかだけでも,落とし穴にハマる可能性は圧倒的に低くなる.逆に全く知らなかったら,先人達の轍を踏む事も十分ありうる.

怪しげな自己啓発本に注意

斎藤一人の似たような内容の本を何十冊も読んだり,「The Secret」とか怪しげな自己啓発本に夢中になる暇があったら,現実を見据えて勉強すべき事は山のようにあるはずだ.まともな経営知識と明確なビジョンがなければ,銀行だって相手にしてもらえない.少なくとも私だったら,独立する前にそれくらいの下準備はしておく(可能な限り最善を尽くし,最後は神頼みというのなら分かる).

夢を描くのはいいが,40歳を過ぎたからと言ってあまり焦って行動を起こすべきではないし,ましてや論理性の欠いた自己啓発本に乗せられない様に注意すべきだ.

ちなみに私は独立など全く興味なし.あまりにも大きなマイナスイメージを父の背中から感じるので,今後も興味を抱く事はない.