書評『今いる場所で突き抜けろ!』:ジョブスはコンピュータが好きでアップル社を立ち上げたわけじゃない.その事実から我々は何を学びとるか?

正直言うと,私はこの本を読むまで,今の自分の仕事に本当に満足しているのか?という疑問をずーっと持ち続けていた.このような感覚は社会人だけではないだろう.

たとえば就活を控えた学生であれば,会社を選ぶ際に

  • 自分の本当に好きなことは何か?
  • 自分のやりたいことは何か?

これらが見つからず,就活前になって慌てて自分探しを始めたりする.社会人となって長く働いている私だって気持ち的には似たようなものだ.誰でも多かれ少なかれ,そういう思いを抱いているだろう.

このような「迷える職業人」に対して,本書は1つの大きな解答を与えてくれるはずだ.

スティーブ・ジョブスの言葉を真に受けるな!

本書では最初の章で,アップルの創業者スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学で卒業生に対して行ったスピーチについて述べられている.ジョブスは自分の人生から得た教訓を述べたとのことだが,その中の1つとして,

夢中になれるものを見つけよ.

そして,それをまだ見つけていないなら探し続けよ.妥協はするなとある.スピーチが終わると総立ちの大喝采だったという.

これに対して筆者はジョブスに関する面白い「事実」を説明している.

もしあなたがアップルコンピュータ創業前の若いスティーブジョブスに出会っていたとしても,彼がハイテク企業をこれからつくろうと熱い思いを抱いている人物には到底見えなかっただろう.

ん?それは一体どういう意味か?

と思って読み進めて行くと,ジョブスのアップル創業時のヒッピーぶりが詳細に書かれていた.

アップル社を起業するまでの数ヶ月間,ジョブスは悩み多き青年であり,精神的悟りを求め,「手っ取り早く現金が手に入ると約束された」ときだけ,エレクトロニクス業界に手を出していたのだ.

もし当時のジョブスが「自分の好きなことを仕事にする」という選択をしていたら,ヨガの導師になっていただろうと分析している(ジョブスが禅やヨガに熱中していたのは有名).十分ありえる話である.

別にジョブスをこき下ろすことが目的ではない.目的は,あのジョブスですら「やりたいこと」を追求した結果としてアップルを創業したのではないという事実を正しく知ることである.

しかし,ジョブスのスピーチを聞くと,間違いなく彼は自分の仕事を心から好きだというのがわかる.この謎を解くのが本書の大きな魅力である.

「やりたいこと」など見つからないという現実

ジョブスだって最初は我々と同じ悩み多き人生を送っていたに過ぎない.そのことを考えた時,ジョブス自身が言ってた「夢中になれるものを見つけよ」というアドバイスは,少なくとも若い頃のジョブスには当てはまらないことになる.

筆者はこの本の前半の結論として

  • 「やりたいこと」は見つからない

と述べている.そしてその後で,「自分のやりたいこと」を仕事にした人たちの具体的な事例をいくつか紹介している.そして,

  • 失敗した人はなぜ失敗したのか?
  • 成功した人はなぜ成功したのか?

その理由を客観的かつ極めて論理的に説明している.大変面白く,かつ説得力のある内容である.おそらく,ここで筆者が結論として述べた「失敗の理由」は,事業に失敗した人の大半に当てはまるだろう

逆に一体何をどうやれば,好きなことを事業として成功できるのか.そもそも,簡単には見つからないはずの「好きなこと」「やりたいこと」は,なぜ見つかったのか? そのことについて成功者たちの共通点を客観的にまとめている.

キーワードは「希少性」「積み重ね」である.

そしてそれを生み出す土壌は,今自分がいる環境にあるという点だ.詳しくは本書を読んでいただきたい.

まとめ

事業に成功する秘訣とかそういう話は,スピリチュアルなものや精神論的なもの,またはテクニックのみに偏ったものが多くてうんざりしていた.たとえば,事業に失敗した私の知り合いが没頭していたある種の本については,この記事に書いてます.

だけど,今回紹介した本は,自分の経験だけをごり押しする事業者や評論家が書いた本とは一線を画す.主張していることに思いつきや自身の経験だけで述べているところは全くない.成功者を追跡調査した結果から導き出された根拠とエビデンスが厳然としてある.

また,事業を起こしたい人だけでなく,今の自分の仕事に「疑問をもっている」人にもぜひ一読してもらいたい内容だ.

私自身も,仕事には大きな不満もなく,それなりに満足できる仕事に就いたと思っている反面,やはり心の片隅に「自分の天職は他にあるんじゃないか?」という思いを抱いていた.

だけど,この本を読んでスッキリした.今の仕事に全力を注ごうと思っただけでなく,その先の可能性についても夢を膨らませて,この本で言うところの「キャリア資産」を少しずつ構築していきたいと思った次第である.

私は最近,専門書以外はすべてKindle版で購入することにしています.スマホさえあれば持ち運びできるのでとても便利.オススメです!