【統計のための行列代数・私的ノート】線形独立と線形従属 No.2:補助定理3.2.2.を噛み砕く

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「統計のための行列代数(上)」を勉強してますが,前回に続いて第3章の線形従属と線形独立の話.次は,補助定理3.2.2を考えてみます.

補助定理3.2.2.を考える

補助定理3.2.2.は以下です.途中,冗長な言い回し部分は端折ってみます.

2つ以上の\(m\times n\)行列の集合\(\{\mathbf{A}_1, \mathbf{A}_2, \cdots ,\mathbf{A}_k\}\)において,この最初の行列は\(\mathbf{0}\)でないとする.このとき,この行列が少なくとも1つがその前にある行列の線型結合として表すことができるときかつそのときに限って,(中略)線形従属である.(すなわち,\(\{\mathbf{A}_1, \mathbf{A}_2, \cdots ,\mathbf{A}_k\}\)は,これらの行列のどれもその前にある行列の線型結合として表すことができないかつそのときに限って,(中略)線形独立である.)

で,この補助定理の証明だけど,テキストでは,\(j\)番目の行列\(\mathbf{A}_j\)がその他の\(j\)番目より前にある行列の線形結合で表されるので,式で書くと,

\[
\mathbf{A}_j = x_1\mathbf{A}_1 + x_2\mathbf{A}_2 + \cdots +x_{j-1}\mathbf{A}_{j-1}
\]

と記述できる時は,\(\{\mathbf{A}_1, \mathbf{A}_2, \cdots ,\mathbf{A}_k\}\)は補助定理3.2.1.よりただちに線形従属である.

・・・と書いてあるけど,一瞬???となってしまった.1から\(j\)までの線形結合だけで,\(j+1\)以降の行列を含めても線形従属と言えるのかどうかという点です.つまり,補助定理3.2.1.

\[
\mathbf{A}_j = x_1\mathbf{A}_1 + x_2\mathbf{A}_2 + \cdots +x_{j-1}\mathbf{A}_{j-1}+x_{j+1}\mathbf{A}_{j+1}+\cdots x_{k}\mathbf{A}_{k}
\]

における後ろの\(j+1\)から\(k\)まで加算がなくても,線形従属と言って良いのか?という疑問です.

だけど,これはおそらく,\(x_{j+1}=x_{j+2}=\cdots =x_k=0\)と考えるといいのかもしれない(少なくとも1つは0でないスカラーであればいいので).

また,\(\{\mathbf{A}_1, \mathbf{A}_2, \cdots ,\mathbf{A}_k\}\)が線形従属であると仮定し,\(j\)を\(\{\mathbf{A}_1, \mathbf{A}_2, \cdots ,\mathbf{A}_j\}\)が線形従属な集合である最初の整数であると定義してますが,これは以下のように考えるとよいと思います.

前回の例でいうと,2つの独立したベクトルの線形結合として表されるベクトル
\[
\mathbf{a} = x_1\mathbf{a}_1 + x_2\mathbf{a}_2
\]
を含んだベクトル集合 \(\{\mathbf{a}, \mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2\}\) は線形従属になるという場合にあてはめる.ここで,\(\mathbf{a}\)を\(\mathbf{a}_3\)と書けば,\(\{\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\mathbf{a}_3\}\)となり,\(j=3\)は線形従属となる最初の整数となる.\(j=1,2\)だけだとこのベクトル集合は線形独立.つまり,

\[
x_1 \mathbf{a}_1 +x_2 \mathbf{a}_2 +x_3 \mathbf{a}_3= \mathbf{0}
\]

ただし,\(x_3\ne 0\)である.これが0になると,

\[
x_1 \mathbf{a}_1 +x_2 \mathbf{a}_2 = \mathbf{0}
\]

となって,\(j=3\)が線形従属となる最初の整数にならない.ふむ,これは確かにそうだな.では,\(\{\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2, \cdots ,\mathbf{a}_k\}\)が線形従属なのは,具体的にはどんな場合か考える.

先の例を用いて,ベクトル\(\{\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2\}\)が線形独立で2次元平面を構成しているとする.この2つのベクトルの集合を座標軸方向とする平面上に存在するベクトルをいくら集合に加えても,それは\(\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2\)の線形結合で表されるベクトルになるので線形従属.つまり,\(\mathbf{a}_4, \mathbf{a}_5\)をこの平面上のベクトルとすると,

\[
x_1\mathbf{a}_1 + x_2\mathbf{a}_2 + x_3\mathbf{a}_3 + x_4\mathbf{a}_4 + x_5\mathbf{a}_5= \mathbf{0}
\]

が成立し,\(\{\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\mathbf{a}_3,\mathbf{a}_4,\mathbf{a}_5 \}\)は線形従属.なぜなら,\(x_3\ne 0, x_4=x_5=0\)の場合,\(\mathbf{a}_3\)は\(\mathbf{a}_1\)と\(\mathbf{a}_2\)の線形結合で表されるし,\(x_4\ne 0, x_3=x_5=0\)の場合,\(\mathbf{a}_4\)は\(\mathbf{a}_1\)と\(\mathbf{a}_2\)の線形結合で表される.同様に,\(x_5\ne 0, x_3=x_4=0\)の場合,\(\mathbf{a}_5\)は\(\mathbf{a}_1\)と\(\mathbf{a}_2\)の線形結合で表される.また,\(x_4\ne 0, x_3=x_5=0\)などの条件は「少なくとも1つは0でない」という線形従属の定義に当てはまるので問題ない.

つまり,\(\{\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\mathbf{a}_3,\mathbf{a}_4,\mathbf{a}_5\}\)は線形従属である.同じように2次元平面上のベクトルをいくら集合に増やしていっても同様の議論ができるので,より一般化すると,\(\{\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\cdots ,\mathbf{a}_k \}\)は線形従属のベクトル集合といえる.

補助定理3.2.2.の意味するところは,こういうことなんじゃないだろうか?

系3.2.3.の意味するところ

次に,補助定理3.2.2.を受けて系3.2.3.が述べられている.

\(\{\mathbf{A}_1, \cdots ,\mathbf{A}_k\}\)が\(m\times n\)行列の(空でない)線形独立な集合であり,\(\mathbf{A}\)が別の\(m\times n\)行列であると仮定する.このとき,集合\(\{\mathbf{A}_1, \cdots ,\mathbf{A}_k,\mathbf{A}\}\)は,\(\mathbf{A}\)が行列\(\{\mathbf{A}_1, \cdots ,\mathbf{A}_k\}\)の線形結合として表すことが出来ないときかつそのときに限って,線形独立である

これはそんなに難しい話ではない.3次元ベクトルで考えてみると,3次元空間内の2つの線型独立なベクトル集合\(\{\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2\}\)は,この2つのベクトルを座標軸とする2次元平面を構成する.

ここで,ベクトル\(\mathbf{a}\)がこの平面上にあれば,\(\{\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\mathbf{a}\}\)は線形従属であるのはこれまでの議論から明らか.逆に言えば,線形独立な場合は\(\mathbf{a}\)がこの平面上にない場合を指す.

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