論文博士は課程博士より劣る?その原因を探る

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こういう記事を見かけたので,ざっと読んでみました.客観的なデータに基づいた結果なので,信ぴょう性はあると思います.

「課程博士の発明生産性は論文博士より38%程度高い」という結果のようです.これは周囲で学位を取得した人たちの経緯を知っている私としては大きな驚きでした.

東大のような大学は知りませんが,通常レベルの大学の課程博士の実態を言うと,よほど酷い学生を除けば指導教授の温情が入ることもあるし,年限もあるのでちょっとくらい基準に届かなくても指導教授の政治力で押し切るケースもあります.事実,そのような例を私はいくつも知ってます.

就職先も研究職がほとんどだから,指導教授の紹介で決まることが多い.内定先が決まっているのに学位未修得になってしまうと相手に多大な迷惑をかける.それは教授の責任も問われることも意味するので,それは避けたいと思うのがごく自然です.

だけど,論文博士は全くそのような束縛はありません.もちろん,社会人ですから会社の人事考査のタイミングとかそういう要因はあるにせよ,基本的に学位取得の要件だけを考えることになります.その基準に満たさない場合,5年以上かかるのも何ら不思議ではないのです.

あくまで私の知ってる人たちに限った話ですが,課程博士の中には怪しげな業績の人をしばしば見かけます(特に社会人博士課程で取得した人の場合).そして,やはりそういう怪しげな業績の人は,取得後の業績も芳しくないのも事実です.

ただ,リンク先のページのグラフでは,明らかに論文博士の方が課程博士より特許出願件数が少ないことがわかります.その理由はどこにあるのか?

私は博士論文のテーマにあるのではと思います.

職場の研究テーマを持っていけないと相当つらい

課程博士の場合,学位を取得してしまうとその研究はそこで終了する.つまり,就職後は会社での研究テーマに全力で取り組める.

一方,論文博士はどうか?

働きながら取得するので,会社での研究テーマと学位を取得するための研究テーマが一致しないこともあり,その場合,双方を同時並行にやらなきゃいけない.そうなると会社での特許出願数などの生産性はどうしても落ちる

このような違いが両者の差になっているのではないかと予想します.

私も論文博士で学位を取得しましたが,幸運なことに仕事でやっている研究テーマをそのまま学位論文のテーマに持っていけたので,生産性はそれほど落ちませんでした(←本当か?笑).

だけど,私の知り合いの中には全く異なるテーマをほぼ1から勉強した人もいました.とても優秀な人だったので職場の生産性はキープしてましたが,その分,学位取得まで10年かかってます.年数はかかっても確実に基準を満たす努力を積み重ねてました.少なくとも,私の知っている論文博士の多くはこういう人たちばかりです.

私自身はともかく,そんな人たちの様子を見ていると,論文博士の方が課程博士より(能力的に)劣っているとはとても思えないのですが,このようなグラフが出てしまうとどうしてもそのようなイメージが先行してしまうでしょうね.

実は分野によっても異なる?

昔は学位論文が大学の図書館に普通に冊子として閲覧できるようになっており,学生の頃,研究に関連する医学博士の博士論文を見たことがあるんですが,その時,書棚にあった他の博士論文もパラパラと眺めてました.

で,その時ちょっとした発見がありました.

論文博士の学位論文の方が,課程博士のものよりかなり薄っぺらだったことです.論文博士の方が審査が厳しいし,内容のボリュームも論文博士の方が上と思っていたので,かなり驚きました.

どうやら,医学の分野では論文博士の方が明らかに基準が低いようなので,分野によって考え方が違うのかもしれませんね.




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